今日も劇場へ? 森岡実穂・劇場通いの記録

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zoom RSS 二コラス・ハイトナー演出『ジュリアス・シーザー』@ロンドン・ブリッジシアター(2018年3月14日)

<<   作成日時 : 2018/03/17 23:10   >>

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 正方形の平土間を囲むように上三層のギャラリーが設定された演劇空間。平土間には昇降により使われるところが変化する演台がいくつもあって、立ち見の観客たちはどこかのプラットフォームが上がるとすばらしい食いつきでその縁に群がっていく。それこそプロレスの会場みたいなのだ。政治のドラマは格闘技のイメージと相性がいい(美術:バニー・クリスティ)。

 会場に入ると、平土間ではロックの演奏をやっている(うち一曲は『ロッキー3』の主題歌「アイ・オブ・ザ・タイガー」だった。盛り上がる!)。選挙の時に歌手が応援にくるのはよくあることだが、この場面で平土間もギャラリーもそれなりにエンジンがかかる。政治とは民衆のレベルでは何かへの「熱狂」一択なのだ、という厳しい現実がひしひしと伝わってくる。
 リーダー的存在や交通整理人は入れているとはいえ、ある意味ハイトナー演出の肝であるこの「一般民衆」の「役」の大部分を、毎日入れ替わる平土間の客でやってこのクオリティの出来上がりはすごい。ちなみにこの日は高校生の集団が平土間参加客の三分の一くらいを占めていたのだけれど、あちこちに生まれては消えるステージをすごい勢いで追いかけ、かぶりつきで身を乗り出す。見事に演出を支えていた!この子たちは『ジュリアス・シーザー』という作品を熟知はしてないのかもしれないけれど、目の前で展開する白熱のドラマが彼ら彼女らを休憩なしの2時間くぎづけにして引っ張りまわす。

 キャシアスはミシェル・フェアリー、キャスカにアジョア・アンド―と重要な役のいくつかを女性に変更。その他、政界にうごめく人々の設定に現代的な多様性を織り込んでいる。ブルータスはベン・ウィショー。過去の独裁やファシズムについての本を読み漁る学者肌の人間として描かれていて、アントニー(デイヴィッド・モリッシー)を排除しきれなかったという、現場での決定的失敗の根っこをそこに感じることができる。

 設定は徹頭徹尾現代なので、シーザー殺害もピストルで行われる。平土間の中で縦長に設定された大階段の最上段にシーザーが座っていて、ブルータス以下同志の政治家たちはその途中からそれぞれ発砲する。
 現代的な設定である故に、「皆が銃を持っているなんで、ここはアメリカ?」「SPはどうしてるの?」「いくら政治家でも公開殺人で逮捕されないのはありえない」など現実的な疑問も浮かんできてしまう。だがだからこそ、「これはクーデターの話なのだ」ということがいままでになく強烈に迫ってくるのだろう。そしてこの後に続くのは内戦。そこでの凄まじい爆発音や充満する煙、刺すような光。9.11からしばらく、舞台で「爆発」を描くならちゃんと解説をつけて、というぴりぴりした時代を知る者にとってはありえないような派手な「戦い」であった。平土間の参加者たちが本気でケホケホ咳をするレベルの仕掛けが実現している。
 その中で、前半、とくにシーザー殺害場面ではきりっとスーツやワンピースを着こなしていた有能な政治家たちが、軍服もなくぼろぼろの普段着で応戦している。そのジェットコースターに乗ったようなスピードの、大きな落差の変化が印象深かった。若干昼行燈の腰巾着とみせかけたアントニーの、肝心のシーザー追悼スピーチでは場の流れを一気に変える弁舌力もインパクト大。

(トレイラーを見て、ちょっと1917年ソヴィエト革命付近の図像をいくつか思い出してしまった。赤がたくさん使われているからだろうか?ベン・ウィショーが誰かに似ている気が……)

 この作品の録画はNTLiveで上演されるらしいので、その際には「カメラワーク」という、政治家が登場するニュースを切り取る上で非常に重要な演出も追加されることになる。画面の中で、誰が、どのような角度から提示されるのか、いまから楽しみだ。

NTLiveのトレイラー。カッコいい!
https://www.youtube.com/watch?v=micAGOYfmJs

Julius Caesar, Nicholas Hytner's production
公式サイト。上演は4月15日まで。
https://bridgetheatre.co.uk/whats-on/julius-caesar/ 

今回ここに行くために London Bridge のあたりにほぼ初めて行ったけど、新しいクールなお店がたくさんあり、観光的にはもう私は浦島太郎であることがよーくわかりました(苦笑)。写真はその劇場のある側から見えるガーキンとか並んでるあたり。今回はウェストエンド以外に結構行ったので、道にもたくさん迷ったよ。
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