「青龍社創立九十年特別展 龍子と同時代の画家たち」@大田区・龍子記念館(2019年11月29日)

 川端龍子という画家、山種美術館で見た「鳴門」で気に入って、先月は京都の堂本印象美術館でちょうど行けるタイミングで展覧会があるというので観に行った。そこで知ったのが今回の展覧会。彼が院展を脱退して作ったグループ「青龍社」の創立九十年特別展ということで、彼本人が自分の喜寿に設立したという大田区立龍子記念館へ。会期がこの日曜、12月1日までなので、ちょっとギリギリの日程での鑑賞だったけれど、行ってよかった。アトリエ・旧宅拝見と共に非常に楽しめた。

 龍子記念館。
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 龍子公園。
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 ここはFBをやっていないので、ツイッターに載っていた写真はツイートのままリンク。

 まずはなんといっても入口すぐにどーんと置かれた龍子のエレガントな屏風絵「草の実」、そして「和暖」!黒い背景に流れるような金色の草の葉。「鳴門」と対照的に、水が不足してカメがひっくり返り、ナマズが泥の中でのた打ちまわるという「請雨曼荼羅」。
https://twitter.com/ota_bunka/status/1188347241779453952 

 そして青龍社の面々の残した作品群。特に、戦中~終戦期の生活を写し出す作品群が面白い。花鳥風月はいまや繊細な色彩で描かれるサツマイモに……というのが、小畠鼎子「増産」。美しい紫色の芋の蔓を、オカッパで鉢巻をした乙女が手にぶらさげている。自給自足をエンカレッジする作品として時局(の検閲)を乗り切ろうとしたということなのか、きれいと思えるものを探したらコレだったのか。
https://twitter.com/ota_bunka/status/1190950865441439744 

 終戦前年の安西啓明「家庭菜園」に描かれた世界も、カタログを読むと実際に龍子の家の近くにこういう場所があったらしいのだが、敗色も濃くなってきたこの時点のことを考えると一種の楽園幻想的でむしろ哀しい。繁る緑にたわわな野菜。合間からのぞく子どもたち。ちょっとルソーの描く南国にありそうなジャングル化しつつある野菜畑。「或る記念像」では安西自身の子どもたち四兄妹が並ぶ。服に飛行機のアップリケ?がつけられているのが戦時中を思わせる。そして戦後の「白い教科書」。実際には教科書は黒塗りしたけど、確かに精神的にはむしろ教科書は白から始めたい時代。
https://twitter.com/ota_bunka/status/1190950865441439744 

 横山操「グランドキャニオン」(1961)も、燃えるような夕陽?と真っ黒な深い崖が大画面に広がる様に強烈な終末感を感じた。展示空間の中でもすごい引力を放っていた。さすがに戦後の出世頭で、周囲の嫉妬で脱退を余儀なくされただけのことはある。
https://twitter.com/ota_bunka/status/1190626539479552001

 あと、戦前の同人だけれど、地元秋田県の農民や労働者の「社会の現実」を描いた福田豊四郎の「溶鉱炉」(1933)など、ルール地方で買った美術展のカタログに掲載されていた、廃坑を描いた絵の事を思い出させた。やはり20世紀前半、これを芸術として残さなくてはと思った人たちが世界のあちこちにいたのだな。
 比較対象のため、ちょっと部分だけ。最初が「溶鉱炉」、あとのが Bergwerke auf Glas (2003)から。

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こちらは1942年、ボーフムのハルペンという地域の教会のステンドグラス。
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 堂本印象美術館での「運命の始めと終り(受胎告知・刑架)」の後者のピエタが強烈。金屏風の中央に大きな黒い十字架と、黒い尼僧服を着たマリアの存在感が圧倒的。吸い込まれそうなうつろな目。折れた木のようなキリストの体の端々に弟子やマグダラのマリアがすがる。この絵について、公式図録の色出しはイマイチ。重い金の背景の中で、この黒の十字架とマリアの存在感がどれだけ突出しているか。また、天使たちのまわりに塗られたグリーンが結構効いていたのにこれだと見えない。たぶん、この携帯アップロードであろう写真のほうがそのインパクトはわかりやすい。
https://twitter.com/ota_bunka/status/1194827382441463808 



 「青龍社創立九十年特別展 龍子と同時代の画家たち」はこの週末で終わり……興味のある方はダッシュ!

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